アンサンブルへの誘い。

本校では、各専攻の生徒たちが小編成でのアンサンブルを自発的に学ぶことができるカリキュラムを多く用意しています。ピアノの生徒にはピアノアンサンブル、弦楽器の生徒には弦室内楽、管打楽器の生徒には管打室内楽といった具合です。
各アンサンブル授業で指導陣から推薦された団体が、室内楽演奏会に出演することができます。
また、出演の権利をかけたオーディションも開催されており、こちらには授業を履修している生徒以外もエントリーすることができます。
オーディションはピアノアンサンブル部門、弦管打楽器アンサンブル部門、声楽アンサンブル部門、作曲アンサンブル部門の4つに分かれています。近年作曲に興味を示す生徒が爆発的に増えており、作曲アンサンブル部門は特に大賑わいです。

上記の授業推薦、オーディションによって選ばれた12団体の名演奏を振り返ります。
最下部からはアーカイヴ配信もご覧になれますので、是非お楽しみください。

マリンバ三重奏

Ⅰ 和地 胡杜美 Ⅱ 古市 日菜 Ⅲ 沢田 道吾
E.ザック / トナカイを追いかけて

マリンバの柔らかで幻想的な音色にホールが包まれました。一つの手で二本のマレットをもち、両手で合わせると計四本のマレットを自在に操り音楽を奏でる生徒たちの勇姿にご注目ください。まさに離れ技と言えるでしょう。
下手に置かれたマリンバは5オクターヴという広い音域をもつ特別なマリンバで、そんな楽器を演奏する機会に恵まれていることが本校打楽器科の魅力の内の一つです。

サクソフォーン二重奏

Ⅰ 伊藤 心愛 Ⅱ 本橋 美怜
J.M.ルクレール / 2つのヴァイオリンのためのソナタ op.3 No.2 (アルトサクソフォン版)

バロック期の名作が、近代的な楽器サクソフォーンで現代に蘇りました。
素晴らしき遺産をどのようにして後世に残していくか、私たち音楽家は常にこの天命と向き合っています。楽器は時代を重ねる毎にマイナーチェンジを続けており、特にバロック期の作品であれば作曲された当時とは楽器の響きもスケールも変貌を遂げています。それを違う楽器で演奏するとなれば、尚更多くの工夫が求められます。そんな課題に二人の生徒が真正面から向き合った演奏を是非お楽しみください。

作品発表(弦楽四重奏)

川本 千広(ヴァイオリンⅠ 久 絢香 ヴァイオリンⅡ 渡邉 響 ヴィオラ 翠簾野 遥香 チェロ 堀内 真名)
川本 千広 / 弦楽四重奏のための3つの断章 Ⅰ.Lamento Ⅱ.Marcia Ⅲ.Euphoria

レガシーを継ぐ者がいれば、0から1を生み出し続ける者がいます。新作初演は凄まじい緊張感の中で行われ、私たちは歴史的瞬間に立ち会いました。
現代曲と聞くと身構えしてしまう方が多いと思いますが、新しさと愛らしさを兼ね備えた本作は、コンテンポラリーの入門にうってつけです。演奏後に割れんばかりの拍手を浴びる作曲家は感無量の様子でした。

木管五重奏

フルート 安西 美言 オーボエ 吉川 隼介 クラリネット 小長谷未夏 ファゴット 田邊彩乃 ホルン 山本 大雅
J.ハイドン(編曲:H.ペリー) / ディヴェルティメント より 第1,2,4楽章

弦楽器用の作品が、管楽器用にアレンジされた今作。第2楽章の主題はJ.ブラームス作曲の『ハイドンの主題による変奏曲(近年の研究ではハイドンによる主題でないという説も有り)』にも用いられており、特に知られています。ハイドンのロマンと遊び心溢れる書法が、弦楽器とは違ったテイストで味わえる演奏でした。

クラシックギター二重奏

Ⅰ 久恒 梨華 Ⅱ 吉田 松太郎
M.de ファリャ / スペイン舞曲第1番

繊細で哀愁漂う音色が魅力的なクラシックギターによる二重奏です。緻密に積み上げれた音楽が、聴き手の心にスッと入り込みます。本校は日本の音楽高校の中でも、クラシックギターを専門的に学ぶことができる数少ない学校です。今後もクラシックギターの魅力を、世界に向けて広く発信していきます。

ピアノ四重奏

ヴァイオリン 久 絢香 ヴィオラ 翠簾野 遥香 チェロ 小原 彩美 ピアノ 佐藤 史帆
R.シューマン / ピアノ四重奏曲 変ホ長調 op.47より第1楽章

シューマンが、数多くの傑作的な室内楽作品を生み出した「室内楽の年」と呼ばれる年に書き上げたピアノ四重奏曲。幸福感に満ちており、シューマンの作品の中でも非常に人気の高い一曲です。ヴァイオリンとヴィオラ、チェロによる弦楽器群とピアノが、愛らしく寄り添う演奏をお楽しみください。

ピアノ三重奏

ヴァイオリン 渡邉 響 チェロ 安田 沙綾 ピアノ 玉木 莉乃
P.I.チャイコフスキー / ピアノ三重奏曲 イ短調 作品50 〈偉大な芸術家の思い出に〉より抜粋

親友であるピアニスト、ニコライ・ルービンシュタインを失ったチャイコフスキーが書き上げた傑作です。特にピアノ奏者には群を抜いて高度なテクニックが求められる楽曲として有名です。これをきっかけにロシアでは故人を偲んで室内楽曲を作曲するという伝統が生まれ、アレンスキーやラフマニノフなどの後世の作曲たちに受け継がれていきました。
チャイコフスキーの深い悲しみが痛い程に伝わってくる高校生たちの熱演を、是非見届けてください。

ハープ二重奏

Ⅰ 桜井 あかり Ⅱ 東松 愛子
J.トーマス / 戴冠式行進曲

高貴で優雅な楽器の代表格、ハープ。大変高価な楽器であり一台あるだけでも貴重ですが、本校の室内楽演奏会ではあろうことか二台のハープによる演奏に立ち会うことができます。
無数の弦の上で縦横無尽に奏者が指先を走らせる様は、天からの使いが舞い降りたかのようです。心洗われるヒーリングなひと時を、お楽しみください。

作品発表(二台ピアノ)

五十嵐 智輝(Ⅰ 佐々木 里帆 Ⅱ 五十嵐 智輝)
五十嵐 智輝 / 厳格なる奇想曲 1.諧謔的な踊り 2.タランテラ風に

新たな世界を創造する、作曲家。近年では作曲と演奏は分業されることもありますが、昔は作曲家が創りそして自ら演奏していました。今回の作品もまた、作曲家が演奏しています。五十嵐さんが作曲した厳格たる世界観を佐々木さんがさらに広げ、ここに新たな名作が誕生しました。

二台ピアノ#1

Ⅰ 照井 稔理 Ⅱ 川越 成珠
C.サン=サーンス / 死の舞踏 op.40

「死の舞踏」という、非常に不気味な題名の本曲。フランスの作曲家サン=サーンスが、午前0時の時計の音とともに骸骨が現れて不気味に踊り始め、次第に激しさを増してゆくが、夜明けを告げる雄鶏の声が響きわたるや墓に逃げ帰り、再び静寂に包まれるまでを描写的に描いた管弦楽作品です。今回は、2台ピアノ版ですが、骸骨の踊り、骨のぶつかる音などがピアノでも表現され、二人の演奏が妖艶で幻想的な気運を演出していました。

二台ピアノ#2

Ⅰ 咲本 真里奈 Ⅱ 伊佐田 真礼
S.プロコフィエフ(編曲:寺嶋陸也) / 古典交響曲 op.25 第1楽章

近現代の巨匠作曲家であるプロコフィエフは、当時形式が崩壊し調性も失われつつある中で、古典的な形式美を大切にした作曲家です。二人の確固たる作品への理解と解釈によって、伝統から生まれる美的表現が現代に蘇りました。プロコフィエフの純然たる音響と美しい衣装がシンクロして、会場を煌びやかに演出しました。

二台ピアノ#3

Ⅰ 佐藤 史帆 Ⅱ 阿久津 幸
S.ラフマニノフ / 組曲 第1番 「幻想的絵画」 op.5 より 2.夜と愛と 4.復活祭

詩からインスピレーションを受けた本曲。作曲当時、チャイコフスキーに献呈され本人も聴く予定でしたが、直前に他界してしまったという逸話も残されています。ラフマニノフの特徴でもある重厚さやロマンチックで詩的な作風が、二人の芳醇なピアノの音色によってさらなる高みへと昇華され会場を魅了しました。