細部までのこだわりが生み出す小池優華の「言葉と音楽」
今回インタビューに応じてくれたのは、第77回全日本学生音楽コンクール フルート部門 高校の部 全国大会で第1位に輝いた、小池優華さん(東京音楽大学付属高等学校1年在学中)だ。そんな彼女の「音を言葉」として捉える演奏ルーツや日々の練習の様子について探った。
「フルートは一種のコミュニケーションツール」
ーフルートを始めたきっかけを教えてください。
小)親の知り合いがフルートをやっていて、その方のコンサートに行ったときに、フルートの音はもちろん、見た目も含めて、フルートという存在がキラキラして見えました。そこで私もやりたいなと思ったのがきっかけです。
ー小池さんが思うフルートの魅力を教えてください。
小)見た目もすごくキラキラしていて、ステージで見ても憧れを持てる楽器だと思います。また、高い音が多いので、歌のように演奏できるところも魅力的です。
「全国大会について」
ー全国大会で演奏した曲〈P.タファネル/『魔弾の射手』によるファンタジー〉について、選んだ理由や、思い入れなどがあれば教えてください。
小)この曲はもともと私が好きな曲です。私が小学生だったときに憧れの身近なお姉さんがこの曲を演奏しているのを聴いて、いつか私も吹きたいと思いました。
今回は細かい部分までこだわって演奏できるようにたくさん準備ができました。
ーそんな中で挑んだ今回の全国大会の舞台には、どんな気持ちで立ちましたか。
小)この舞台は去年と一昨年も出場していて、ずっと追いかけてきた舞台でもありました。なのですごく重さを感じたというか、本番前一ヶ月くらいはずっと心のどこかに学生コン(全日本学生音楽コンクールの通称)があり、そわそわしていました。ですが、本番はせっかくの舞台なので、好きな曲をホールで演奏できるのを楽しもうと思い、気持ちよく挑むことができました。
「本番について」
ー小池さんは本番で緊張しますか。また、緊張したときの対処法や、本番の日のルーティーンはありますか。
小)そのときによって違いますが、基本的にはあまり緊張しないです。大きい舞台ほど緊張することはありますが、逆にほどよい緊張感はもっていたいと思っています。本番前のそのままの状態で舞台に上がるよりも、特別感を持って演奏した方が、そのときにしかできない演奏ができたりすると思います。なので、本番前はあえて自分にプレッシャーを与え、エンジンをかけてから舞台に上がるようにしています。
....舞台での一瞬一瞬を大切に。この考え方がきっと彼女の演奏にも出ているのだろう。本番の緊張で悩む生徒も少なくないが、緊張はそのときにしかできない演奏を楽しむためのエンジン、と考えるのも一つの手かもしれない。
ー好きな食べ物や、本番後のご褒美はありますか?
小)今回の演奏後は、家族で焼き肉を食べに行きました!(笑)
「音楽学校での日々」
ー学校生活で楽しいことや、刺激をもらっていることがあれば教えてください。
小)たくさんみんなには刺激をもらっています。クラスで聴こえてくる音や、みんなが頑張っている姿から、私も頑張ろうと思えます。
ー普段はクラスメイトとして小池さんと接している私にとっては、常に元気で明るい小池さんが印象的です。その明るさの秘訣は?!
小)つぼが浅いのもあると思うんですけど....(笑)
でもいつも友だちに恵まれていて、まわりの子たちが笑わせてくれるのでそんな感じに見えるのかも(笑)
「細部へのこだわりから生まれる小池優華の音楽」
ー普段の練習時間はどのくらいですか。
小)一定してこの時間っていうのはないんですけど、吹き始めたら時間とかは気にせずに気が済むまでやっています。
ー確かに、教室で練習している姿をよく見かけますが、ものすごい集中力ですよね!練習はどんなことを意識しているか教えてください。
小)雑なところをつくらないように速いところはたくさん練習を重ねるのはもちろん、基礎練習は毎日絶対欠かさないようにしています。基礎練習をすることは当たり前だからこそやり忘れちゃうし、時間がないと今日はいいかなと思いがちだけど、一つ一つの重なりが音にも出てくると思うので、基礎練習は必ずやるように頑張っています。
「小池優華とフルート」
ー音楽と向き合う上で大切にしていることを教えてください。
小)どの曲でも、吹く上で雑なところは絶対に作らないように気を付けていて、どんな部分でも丁寧に演奏できるようにしています。また、師事している先生からいただいた、「曲のフレーズやちょっとした音も、全て言葉のように演奏する。優しく話しかけるところだったり勢いよく語りかけるところだったりを考えるように...」というアドバイスが印象に残っています。
音楽は人との対話ということを意識しています。
....音楽は人との対話。これが、彼女の演奏を紐解く大きな鍵になりそうだ。
ー小池さんはどんなフルート奏者になりたいですか。
小)さっきのお話と通じてくるんですけど、音楽を自分の言葉で伝えるような演奏をしたいです。ここは楽しい・悲しいなどの感情がお客さんと少しでも通じ合って、一緒に音楽を楽しめる奏者になりたいです。
ー最後に、小池さんにとってフルートとはどんな存在ですか。
小)フルートは、自分のそのときの感情を一番そのまま出せるものなので、一番自分に近い存在とい うか、身体の一部のような感じです。
音楽を、一種のコミュニケーションツールとして捉えている。このことが、彼女の演奏が、我々の心に響く理由の一つなのではないか。
奏者と受け手との対話。彼女の演奏と彼女自身の心との対話。彼女は、「言葉のキャッチボール」を、フルートを通してしているのだろう。
そして、その上で一つ一つの言葉を丁寧に届けたい。その想いで、ひたすら音と向き合い、 フルートと向き合い、自分自身と向き合うのが、きっと彼女にとっての「練習」なのだと思う。
だからこそ、彼女の演奏は聴き手の心の奥深くに残るものになるのだろう。
これからも、より多くの人に、彼女の演奏との対話を楽しんでほしいと思う。